凸凹お便りvol.5発行:これって発達あるある?~倉敷発達障がい者支援センター~
みなさんこんにちは。
倉敷発達障がい者支援センターの通信「凸凹お便りvol.5」をとうとう発行することができました(予定では8月ww)_| ̄|○
毎回ご利用者の方のお手伝いをいただいておりますが今回は紙面の6割以上をご協力いただきました(決して怠けている訳では・・・)
イラスト・エピソード・校正・配布等々、私たちだけでは最後まで走り切れませんが、毎回皆様の善意に支えられております。ありがとうございます涙
そしてその実「あっ この凸凹は!」と脳に刷り込んでいる我々なのでございます(怖)
さて、話がそれましたが今回は利用者さんと日頃お会いする中で「これってよく聞く内容だなぁ」「みんな違っているけど共通していることもあるのでは?」と感じたエピソードの1つをA様から提供いただきました。
通信では一部を載せていますがこのブログでは全文お届けいたします☆
いろいろなご意見もあるかと思いますが、Aさんも「理解してくれ」とはおっしゃいません。こんな風に感じる体質のVR(※)体験をしている感覚でお読みください。それではどうぞ!!
※VR=Virtual Realityの略で、「人工現実感」や「仮想現実」と訳されています。限りなく実体験に近い体験が得られるということです。
『発達障害あるある~仕事中のミスについて~』
◆◆◆ルーティーン(自分の中で決めている作業の手順)中に話しかけられるとすごく困る!◆◆◆
発達障害の人は、単純な作業が得意な事がありますが、
覚えるまでは一つ一つを頭と体に叩き込むように頭の中で確認しながら進めています。
まだ慣れない作業をしている時に、途中で話しかけられるととても困ります。
(場合によっては、慣れている作業でも、途中で中断されるとよくミスをします)
◆~書類印刷作業(個人情報あり)の場合~◆
とてもシンプルで簡易な作業に見えますが、とても大事なものを含んでいます。
その為、時間はかけられませんが、とても注意深く作業しなくてはなりません。
クリップで留められた何枚かの重要な書類を、コピーする場合。
————
1.クリップを外す
2.原稿をコピー機にセットする
3.スタートボタンを押す(機械に慣れてない場合もある)
4.印刷物が出てくる
5.次の原稿をコピー機にセットする
以下、繰り返し
最後にクリップを留めて、上司に返却する。
————
ここまでが、大事な作業です。
途中、印刷の向きや範囲などがおかしくなっていたりして、
一度印刷したページをセットし直したり機械の仕組みを再確認したりする事があると、
その度に頭も手も止まります。
個人情報が含まれた書類の場合、いつも以上に注意深く作業していて、
場合によっては少し緊張している場合もあります。
◆私がよくミスをするパターンはこんな感じです。
私の頭の中:原稿からクリップを外して、
1枚目の原稿をセットして、
スタートボタンを押して、
印刷ができたら1枚目の原稿を取って、
2枚目の原稿をセットして、
スタートボタンを押して、
印刷ができたら2枚目の原稿を取…」
上司:〇〇さん(私)、印刷終わったー?後で〇〇しといてくれるー?(遠くから)
私:は、はいー!〇〇ですね!(焦)早く終わらせないと…!
(早く終わらせようとしてその後のページの印刷をルーティーンに従うという意識が低いまま済ませる
=自分のやり方(ルーティーン)はともかく、とにかく終わらせる=急いでいるため)
「あれ…?なんか忘れてるような…」
そのまま印刷が終わったもの(コピー)だけを取り出して、作業を終える。
~数分後~
「〇〇さん、コピー機に原稿(個人情報あり)忘れてるよ!」
「す、すいません!!」
◆『途中で話しかけられてしまって、次にする事を忘れてしまいました。
結果、個人情報が含まれる原稿を、そのままコピー機に放置してしまいました。』
もしこのミスの経緯をこのように伝えた場合、自分のミスを人のせいにしていると言われます。
客観的に見れば、それも仕方がないのかなと思います。
そして、場合によっては、個人情報が含まれる書類がいかに大事なものか、再度教えられる事もあります。
相手にとっては「個人情報保護に関する重要事項の再確認は、大切なことだ」
と思って言ってると思うのですが、私にとっては、「またミスをして説教をされた」
「私が無能だから叱られているんだ」と感じてしまいます。
何故なら、個人情報が含まれている書類がいかに大切かという事は、最初から十分わかっているからです。
だからこそ、普段より注意深く作業をしていたのです。
にも関わらず置き忘れてしまった。
→やっぱり自分はどんなに注意してもダメなんだ。手順を忘れてしまいミスをするんだ。
という、強烈に嫌な気持ちが、3秒くらいの間に頭の中をぐるーっ!と駆け巡ります。
定型発達の人が一日仕事をしていたら、普通は感じないくらい、
ものすごく強い後悔・自己嫌悪が、一瞬で頭の中を全部覆ってしまうのです。
しかしその3秒間が終わっても、ずっとその嫌悪感は残っています。
◆そのぐるーっ!という気持ちの後の悪循環から抜け出すのに、20分くらいかかる事があります。
頭の中で、さっきの何度も考えてしまうのです。
「今回のミスを、絶対に忘れないようにしなくてはいけない」と思い、考え込んでしまいます。
その内、「そういえば、前もこんな事があった…。」などと、過去の失敗や後悔などもあわせて思い出してしまいます。
大切な事だから、このミスは忘れないようにしなくてはいけない、
という自分への戒めという意味から、起こった出来事を何度も頭の中で反芻してしまうのです。
この行程は恐らく定型発達の人の頭の中でも起こる事ですが、発達障害の場合、
本来の「次はミスをしてはいけない」という反省より、自分への苛立ちが大きく、必要以上に気持ちが沈んでしまうのです。
◇印刷が終わった後も、後悔している間は、仕事のパフォーマンスは落ちています。
その間にまたミスをする可能性もありますし、逆に「今度はミスしないぞ!」と思うあまり、
過度に丁寧に仕事をしてしまったり、本当はその後3つくらいの仕事をやらなくてはいけないのに
1つに時間をかけすぎて他の2つを忘れたり、あるいは時間が迫ってしまって、
3つ全部を終わらせようとして、更に新たにミスをしてしまう事もあります。
◆また、原稿を置き忘れなかったとしても、原稿を置き忘れないようにしよう!と思うあまり、
途中で上司に言われた〇〇という用事を忘れる事があります。
印刷が終わった後で「さっき言った〇〇は終わった?」と言われて、
なんとなく聞こえてはいるので、「しまった!」という事になります。
その結果、「人の話を聞いていない」と思われる事があります。
◇発達障害の人にとって、「前にも言ったよね?」「さっき言ったよね?」という言葉は、常に不意打ちです。
何らかの原因(この場合は印刷でミスをしてはいけないという気持ち)によって阻まれて、
それは耳では聞こえていても、頭の中の命令(タスク)として残っていないのです。
タスクとして残ってない以上、そのタスクは実行されないままです。
これがルーティーンが乱れた時の悪循環です。
◆◆ですが、これは上司のせいではありません。◆◆
話しかける事自体が悪いのではなく、タイミングが悪いのです!
更に言うと、ミスをした後の「個人情報がいかに大切か」というレクチャーは、
残念ではありますが、当人の現状を考えると的外れになります。
的外れですし、余計に当人を落ち込ませます。責められていると感じます。
本当に必要な事は、そこではないのです。
場合によっては、「ゆっくりでいいから、間違える事のないように落ち着いて作業してね。」と言われることもあります。
最初から、落ち着いて作業していました。焦ってしまったのは、途中からです。
そんな憤りが頭の中をかけめぐります。
◇エヴァンゲリオンの碇シンジくんでいうと
「目標にセンターを入れてスイッチ、目標にセンターを入れてスイッチ…」を繰り返している時に、
「目標をセンターに」のところで話しかけられてしまうと、そっちに気を取られてしまって、
スイッチを押すのを忘れて次に行ってしまうという事になります。
冗談みたいな話ですが、本当にあるのです。それも頻繁に。
◆ルーティーンを中断される事以外にも、業務の時間が長く続いていて、頭が疲れている事に気づかない時や、
精神状態や体調が悪い時に、また同じミスをしてしまう事があります。
その結果、「あの人はよくミスをする」「あの人はよく原稿をコピー機に置き忘れる」といった印象になってしまいます。
◆◆◆結論:ルーティーン中は話しかけないで!!涙◆◆◆
(できたら、ルーティーンである事を察して欲しいのですが、難しいので、
何かしらの方法で、『この作業をしている時は手順を確認しながらしています(だからあまり邪魔しないで欲しい)』
という事が、伝わればいいのですが…。
◆◆周囲の人からよく言われる事◆◆
こういったヒューマンエラー→反省→重要事項の再確認→再びトライ
という作業は、定型発達の人もしている事なので、
「そんな事、発達障害じゃなくてもよくある事だよ。」
「大袈裟に考えすぎ。」と言われたりします。
ですが、我々発達障害の人は、大小問わず幼い頃から同じようなミスを
ずーーーーっと何百回も繰り返してきています。
気が小さいせいで大袈裟に考えているわけではなくて、次は絶対にミスをしないぞ!という思いのあまり、
強く頭の中で念じてしまうのです。その結果、大袈裟に落ち込んでいるように見えます。
その為、「自分は本当によくミスをする。」という事に対して、自己嫌悪の方が強くなってしまうのです。
◆発達障害の人がしている「反省」は定型発達の人がしている「反省」とは、異なります。
定型発達の人は、恐らく、自分のしたミスの重大さを再確認して恐ろしくはなっても、
危なかった、次は絶対にミスしないぞ、という点だけに集中する事ができるので、
「次はミスをしない」という点だけをシンプルに頭の中に覚えておくことができるのだと思います。
ですが、発達障害の人はそれよりも「自分はダメな人間だ」という事の方が記憶に残ってしまうのです。
その結果、ミスによる次への注意喚起が、影が薄くなってしまったりします。
◆定型発達の人が1つ考えればいい事を、発達障害の人は2つ、あるいはそれ以上考えなくてはならないのです。
・定型発達
1.個人情報はとても大切なものだから、次はミスをしない。
・発達障害
1.個人情報はとても大切なものだから、次はミスをしない。
2.それをミスしてしまう自分はダメな人間だ。
3.過去にも何度もミスを繰り返してしまった。
4.個人情報を軽んじているわけではないのに、また説教をされて納得がいかない
5.もしかしたら他の人も私の事をよくミスをする人だと思っているかもしれない…
以上です。長くなりましたが最後まで読んで下さりありがとうございました。