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とくしちゃんねるVol.6  誤嚥 と 誤嚥性肺炎

今回は、誤嚥 と 誤嚥性肺炎 について、ご説明していきたいと思います。まずは、通常の嚥下(ゴックンと飲み込むこと)からみていきましょう。

☆通常の嚥下について
嚥下(えんげ)とは、お口周りや舌、首などの筋肉を使って、食べ物や飲み物を喉の方へ、そして食道へと送り込む、一連の飲み込みの動作のことをいいます。
嚥下は、成長と共に身についた行為なので、普段は「今から飲み込むぞ」と意識することはあまりないと思います。喉は、食べ物の通り道(食道)と空気の通り道(気管)が交差していて、わずか0.5~0.8秒というゴックンの瞬間に、口や喉の周りの神経や筋肉が複雑に働いて、食べ物や飲み物を食道に送り込んでいます。
通常の飲み込みの仕組みについてみてみましょう。

① 食べ物が口の中にない時は、喉は気管と交通して呼吸をしています。

 

 

 

② 食べ物などが喉を通過する瞬間は、声門や喉頭蓋(こうとうがい)という“ふた”が閉じて気管を塞ぎ、誤って気管に入り込むこと(誤嚥)を防いでいます。

③ 喉頭(甲状軟骨、のど仏と呼ばれる部分)は、ゴックンと飲み込む瞬間、上に動いて食道の入り口を広げ、食べ物を通過しやすくしています。

 

☆誤嚥について ~飲み込みづらくなってきたら誤嚥に注意 ~

今まで何気なく飲んだり食べたりしていたものが、飲み込みづらくなっている場合、以下のような原因が考えられます。

  • 加齢に伴う体の変化、唾液の減少⇒飲み込みやすい食塊にまとめられない。
  • 噛む力の低下⇒飲み込みやすい大きさまで噛み砕けない。
  • 反射神経の衰え⇒気管への“ふた”が間に合わない。
  • 筋力の減少⇒タイミングよくゴックンができない。
  • 疾患(脳卒中、神経疾患、認知症等)や処方薬の影響

これらの原因により、飲み込む時に使う口や喉の周りの働きが低下したり、ゴックンのタイミングがずれたりしやすくなります。すると、誤嚥(食べ物や飲み物が気管に入ってしまうこと)を起こしやすくなり、今まで何気なく飲んだり食べたりしていたものでも、むせやすくなるのです。
では、誤嚥に至る仕組みをみてみましょう。


①喉の周囲の筋肉の衰えにより喉頭が上がりきらないと、食道の入り口が開ききらず、飲み込んだものが食道に流れにくくなります。
② 喉頭蓋(気管と食道の分岐の部分の“ふた”)や声門(気管につながる最後の“門“)で気管をふさぐタイミングが遅れると、とろみの付いていないものほど、隙間から気管に流れていきやすくなります。

また、誤嚥は次の3パターンで起こります。

  1. 嚥下前に起こる誤嚥…まだ飲み込んでいないのに口の中の食物が喉から気管へと流入して誤嚥する場合。
  2. 嚥下中に起こる誤嚥…飲み込んでいる最中に誤嚥する場合。(多くの場合、むせています。)
  3. 嚥下後に起こる誤嚥…飲み込んだ後に誤嚥する場合。(多くの場合、不意に咳き込んでいます。)

3.の誤嚥は、口の中や喉に食物残渣(食べ物の残り)があるために起こります。その残っているものがいつの間にか気管に侵入して誤嚥します。そのため、食べていない時に咳き込みが見られることがあります。嚥下の力が弱い方の場合、1回の嚥下では全てを飲み込めないことがあり、ゴックンしたなと思っても食べ物が喉に残りやすいので、気をつけてみていく必要があります。

ひかりの食事では、利用児さんそれぞれに適した食形態に合わせるとともに、とろみ付きのお茶やお茶ゼリーを提供して、交互嚥下(食べ物の後にお茶などの飲み込みやすいものを摂る ということを交互に行い、口の中や喉に残っているものを流すようにしていく嚥下方法)を心がけるなどの配慮を実施しています。

 

☆誤嚥性肺炎について

口の中が汚れていたり殺菌作用を持つ唾液の分泌量が減っていたりすると、細菌が繁殖しやすくなります。体外の細菌や口の中の細菌が付着した食べ物や唾液が、気管を通って肺の奥まで入り炎症を起こす というのが誤嚥性肺炎です。

健康な状態であれば、多少誤嚥をしても、むせることで気管に入り込んだ段階で吐き出せますし、抵抗力が保たれていれば、細菌から体を守ってくれます。
心配なのは、少食や偏食、持病の悪化、薬の副作用などによって体力や抵抗力が落ちている状態での誤嚥です。むせて吐き出す力が弱く、食べ物や唾液に付着した細菌の繁殖を防ぐ力も弱くなり、誤嚥性肺炎を発症しやすくなるのです。

~誤嚥性肺炎の症状~
誤嚥性肺炎の症状は、発熱やだるさなど、風邪と似ています。むせていない場合は特に、本人も周囲の人も風邪との区別がつきにくいため、気づくのが遅れることもあります。以下のようなサインがみられたら、かかりつけ医に相談しましょう。

  • 食事のあとの声がガラガラ声になっている。
  • 痰が増える、痰が黄色い。
  • 37.5度以上の発熱が続いている。
  • 呼吸が苦しそう。

☆まとめ

私たちの喉には誤嚥を防ぐ仕組みが備わっていますが、疾患や加齢にともなう全身機能の低下によって、喉の働きも弱まり、誤嚥しやすくなります。
むせは誤嚥に対する防御の反射ですので、むせやすくなってきたら、かかりつけ医に相談して、食べやすい食事(とろみ付きなど)に変えていきましょう。
とろみの有無は、喉を通過する時の速さに関係していて、誤嚥の起こりやすさにもつながっています。例えば、とろみのあるシチューやあんかけより、みそ汁やお茶などのとろみの無いものでむせることが多いので、気をつけてみていきたいところです。
また、お口の体操や嚥下体操で飲み込みの筋肉を鍛えたり、歯磨きなどの口腔ケアを習慣にしてお口の中をいつも清潔な状態に保っていくことも、日々心がけていけると良いですね。

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