とくしちゃんねる Vol.31 〜あしたば・コトノハ・わきあいあい・おうちだでの言語聴覚士のお仕事編〜
今回は、セラピスト(言語聴覚士)のお仕事紹介です。
現在、クムレでは言語聴覚士が3人働いています。“言語(ことば)”のリハビリ…というその名前
からも、こどもの療育施設にいて、ことばの訓練をしているのかな?というイメージをもたれてい
る方が多いかもしれませんが、クムレでは、実は 成人の施設 でもお仕事をしています。成人の
施設で、どいうった関わりをしているのか、摂食嚥下評価とコミュニケーション評価の面から、お
話ししたいと思います!!
1.摂食嚥下評価
入所あるいは通所されているご利用者さんの中には食べる機能(摂食嚥下機能)になんらかの
課題がある方も少なくありません。そういった場合に、その要因が何か、またどのような対応
をしてさしあげればよいか、また年齢を重ねていく上で、今後どのようなことを見据えていく
べきかということを考えて、ケースに応じてご提案するというお仕事をしています。
以下(1)~(5)に示す視点から、食事の際にみられるご様子がある場合には、食事内容や
食べ方(介助の仕方)などの経過をみていくようにしています。
(1)誤嚥・誤嚥性肺炎のリスクを考える
✅食事中にむせることがある(頻繁にむせている)
✅噛まずに飲み込む(丸呑みしている)
✅噛む回数が少ない
✅なかなか飲み込めない
✅口に溜めこむ
✅飲み込めずに吐き出す
✅食事ペースがかなり早い
(2)窒息リスクを考える
✅食べ物を次々に口に運ぶ(詰め込む)
✅過去にのどに詰まらせたことがある
✅食事ペースがかなり早い
✅なかなか飲み込めない
✅口に溜めこむ
✅飲み込めずに吐き出す
✅噛まずに飲み込む(丸呑みしている)
✅噛む回数が少ない
✅ひとくちの量が多い(スプーンなどですくう量が多い)
(3) 口腔内(歯や舌)コンディションを考える
✅麺・パンなど食材によって食べにくさがある
✅食べこぼしが多い
✅口の中に食べものが残りやすい
✅咽に送り込みにくい
✅飲み込めずに吐き出す
✅残歯が少ないため、噛みにくい(噛むための歯が少ない)
✅咀嚼運動が止まる
✅口に溜めこむ
✅義歯を作っていない(入れていない)
✅口の中が汚れている
(4)とりまく環境を考える
✅スプーンや箸などの食具がうまく使えていない
✅キョロキョロして集中して食べられない
✅食べこぼしが多い
✅見にくそうにしている(視力や視野の課題)
✅皿や箸が持てない、すぐ手から離れる(筋力他)
✅傾眠傾向(食べ始めると眠たそう)
✅持続して座れない(すぐ椅子から立ち上がる)
✅離席する(食事中にウロウロする)
✅急に大声を発する
✅食具や食器など物を投げる
(5)その他の要因や個々の背景を考える
✅診断を受けている障害による特性
✅疾患による麻痺等
✅継続的服薬による飲み込みへの影響(嚥下力の低下)
✅だれしも生じる可能性がある加齢性要因
✅過敏がある
✅偏食がある
✅特定の人の介入を受け入れるor受け入れられない等などのこだわり
これまでの摂食習慣などが影響してうまく食べることが難しくなる場合もあります。
提供されているお食事がご本人の食べる能力にあっているか、そのまま食べていること
で誤嚥や窒息などのリスクはないかなど検討しています。
必要に応じて医療機関と連携し、嚥下造影検査(VF)等にも同席します。
また、日頃からお口の健康を維持すること(口腔ケアや口腔マッサージ)も大切だと
いうことをお伝えしています。
2.コミュニケーション評価
ご利用者さんが過ごしてこられたこれまでの生活ベースもおありですが、コミュニケーション
を図る上で、現時点での困りごと、あるいは、今後の生活を考えていく上で、どのような関わ
り方がよいか、また今どんなことができて、どんなことが難しいのか、ということを支援スタ
ッフから、場合によってはご家族から聞き取り、ご利用者さんご本人の様子をみつつ、対応を
一緒に考えていくというお仕事もしています。
(1)意思表示の方法(ツール)を考える
スケジュール、絵カード、文字盤(50音表)、コミュニケーションボード(要求ボード)、口頭でのやりと
りなどを考える上で、ご本人が理解・表出しやすい方法を探る。できる機能(能力)を評価・分析する。
(2)こだわりに対する対処を考える
認知機能(言語理解・記憶・注意・遂行)の評価、受け入れられること(好きなこと把握)、受け入れられ
ないこと(嫌いなこと把握)、視知覚(ものの見方、聞こえ方)、かけひきの可否、時系列での理解、比較
・選択、その他、利用者さんの安心できるルーティン行動など情報収集し、案を考える。
成人期のご利用者さんの支援ケースとして、言語聴覚士(ST)の対応では難しい場合もあります。
そういう場合には、運動的側面から 理学療法士(PT)に応援を、また食事動作や姿勢など
生活動作的な側面から 作業療法士(OT)にも応援依頼し、チームで対応を考えています。